シャワーを中心とした生活のすすめ
 ある夏、少し早く起きてボディソープとシャワーで身ぎれいにしてから仕事に出かけるのが気分的 がよいことに気付きました。秋を迎え、冬を迎えても集合住宅に住んでいることから浴室の室温はそんなに下がらないことから、一年を通してシャワー生活 となりました。整容にかかる時間が短縮され、水道水、ガスの使用量も減りました。そして風呂に入るのは旅行時のみとなりました。
 日本の住環境の変化に次があります。
  • マンションや高断熱住宅へ居住する世帯の増
  • 浴室にシャワー設備の設置の増

 東京近郊に住んでいると、夏は朝、シャワーを浴びてでかけ、夜、帰宅してシャワーで汗を洗い流すのが自然に思われます。夏はシャワー直後、気化熱が奪われる ことからしばらく涼しい気分でいられます。また、上記のように集合住宅では隣家が断熱層の役割をすることから、浴室 の室温も他の部屋とあまり変わりません。このような住環境の変化が、シャワーだけの生活を可能にしています。 

 

計測

 次の表は私がストップウオッチを浴室に持ち込んでその表示を横目で見ながらシャワーにかかる時間を測定したもの 。シャワーは温度調整付のシングルレバーで、40℃のお湯が1リットル出るのに7秒かかります。がシャワーを使用している時間で 、表より水温調整の時間を含めて3分シャワーを使いますので、水量は約26リットルとなります。目を早く覚ますために冷たい水から浴びる場合は前の20秒は短くなり、 冬場は体を温めるためにシャワーを浴びる時間が長くなります。しかし、目安としては大きくはずれていないと思います。
 家族構成もありますが、単身世帯としての単純比較では水量、ガス量とも約1/6になります。

表1 全身を洗う場合のシャワーの利用時間

動作 所要時間 コメント
脱衣
水温調整 20秒 温水が出てくるまで水を流している時間(TESを使っているため)
体全体を濡らす 1分 20秒 シャワーの水流をマッサージ代わりにして体中に浴びます。眠っていた体が段々、目を覚ましてくる幸せな時間です。
洗髪 シャンプーで洗髪しながら体は前後、向きを変えながらシャワーを全身に浴びています。そしてシャンプーを洗い流します。
ナイロンタオルを濡らす ボディソープで全身を洗うためのナイロンタオルをシャワーで濡らします。
ナイロンタオルにボディソープをつけて全身を洗う 2分 20秒
体中についたボディソープを洗い流す 1分 20秒
浴室に飛び散った泡を洗い流す
バスタオルで体の水気を取る
ドライヤーで髪を乾かす
着衣
合計 5分 20秒  

表2 汗を流すためのシャワーの利用時間

動作 所要時間 コメント
脱衣
水温調整 20秒 温水が出てくるまで水を流している時間(TESを使っているため)。夏場は不要。
体全体を洗い流す 20秒 体の汗や汚れを洗い流します。(その時の気分で時間にバラツキがあります。)
バスタオルで体の水気を取る
ドライヤーで髪を乾かす
着衣
合計 40秒  

表3 シャワーと浴槽を使う場合の比較

項目 シャワー

浴槽に入る場合

備考
準備時間 0分

18分

浴槽に180リットルのお湯を、10リットル/分の湯を供給するものと仮定。
利用時間 5分20秒

10分

個人差が大
ガス使用時間 3分

18分+α

(αは最後に体を洗い流すのに使用する水栓からの湯のためのもの)

 
投入エネルギー量 1

6

ガス使用時間の比とする
水量 26リットル 180リットル+α

(αは最後に体を洗い流すのに使用する水栓からの湯のためのもの)

 

 

考察

(1) 他のデータとの比較

 少し資料は旧いですが、空気調和・衛生工学会編『空気調査・衛生工学便覧(改訂第9版,1975)』(p.III-67)の「各種衛生器具・水栓の流量および接続口径 」の表で、シャワー1回当たり使用量として24〜60リットル(水量は種類により大きくことなる)、瞬時最大流量は12〜20リットル/分という記述があります(最近は節水型の衛生器具が増えていることから、 この水量は少なくなっていると考えられます)。また、Sir Terence Conranの"The Bed and Bath Book"で、「1つの浴槽で使う水量はシャワー5〜6基分に相当する」と記されています。後者は、洋式タブ、西欧人が好みとするシャワーの水圧などを考慮にいれる必要があ りますが、上記の数値が大きくはずれたものではないことを理解させます。

(2) 節水の効果

 平成12年の国政調査によれば東京都の人口は1,200万人で世帯数は540万世帯、1世帯あたりの人員は2.23人です。東京都水道局管轄の給水人口は約1,100万人、年間給水量は約16億7千万立米です。単純計算すれば1人1日約400リットルの水を使っていることになります。浴槽にためる湯の量は最低200リットル程度必要で、これに洗い湯が加わります。データの中身を詳細に検討していませんが、毎日、風呂の湯を入替え、家族が同じ湯を利用して入浴するという日本的な生活を考えると東京の世帯では1人当たり約100リットル、入浴に使うことになります。上記のようにシャワーだけの生活とした場合、1人当たりの使用水量を大幅に押さえることが可能になります。また、水を加熱するのに必要なエネルギー量が少なくなりますので、省エネルギーの効果も得られます。

(3) まとめ

 日本の現在の住環境にあわせて、生活習慣を変えることで、節水、省エネルギーの効果を生み出すことは間違いないと思います。「平日はシャワーで体を清潔にして、週末にはゆっくりと浴槽に浸かって 」というメリハリをつけるのも心身をリフレッシュするのによいと思います。
 半身浴という入浴の仕方があるように、湯船にどっぷり浸かることは心臓に負担をかけます。このため、高齢化に向けて浴槽に入ることにこだわらない生活習慣を身につける ことが必要と思います。「毎日、浴槽に入るものだ」という考えを疑ってみて、入浴の方法を見直してみるのがよいと思います。