TCM-AP10 (SONY) 

《 速度調整の可能なICR-S278RMの入手で完全に休眠状態となりました。 》

 


寸法:115x90x35(mm)、質量:約350g(バッテリ込)

 議事録や講演録の作成で、下記のように、便利に使えるのがこのカセットテープレコーダです。フラットマイクを内蔵し、本体を立てた状態で講演などの正面の声、本体を机に水平に置いた状態で会議などの広い範囲の声の録音に使いわけられます。
 以前、アルバイトとか、会社のバンドの関係でテープからバンド譜を作らねばならなかったことがありました。そのようなことから、この機器は音楽する人を念頭に入れて製品企画されたような気がします。

 

仕事での利用

 会議を録音して議事録作成するといういわゆる『テープ起し』の要求は常にあります。その中で早口で聞き難い部分などは速度を遅くして聞きたいですが、単にテープ速度を遅くしただけではピッチまで変わってしまい、聞きづらい音となることがしばしばあります。上記の機械は、DPC (Digital Pitch Control)を内蔵し、音の高さを変えないでテープスピードを調整することができ、これに対応できます。私などは苦手な英語の講演から講演録をつくる時など、助かったものでした。

音楽での利用

 DPCを議事録作成に用いるのであればオートモードで提供される、「音程を保ったままスピードコントロールできる機能」で十分です。しかし、音楽テープから採譜する場合、音程が重要になります。カセットテープレコーダの回転速度は正確に4.75cm/secではなく、JISで速度の誤差が許容されています。テープレコーダで自己録音・再生する場合は大きな問題はないのですが、他の機械で録音したものを別の機械で再生するとこの速度の許容誤差のため、ピッチが異なることがあります。これに気づかず、渡されたテープを「何か音程がとりにくいな」と思いながら、♯が5つもつく譜面をつくってひんしゅくをかったことがあります。
 この機械はマニュアルモードでスピードコントロールとピッチコントロールを別々に調整するこで、もとの曲と同じ音程にあわせた上、演奏速度を変えることができます。これにより、採譜とか、模範演奏を聞きながら楽器演奏の練習をするのに使えます。

 

 他の機器について

 AP10の後継機種のTCM-900(定価:20,000円)ではICリピート機能が内蔵され、テープの巻き戻しをしなくても、同じ部分を何回も聞くことができ、更に便利になっています。
 テープによる原稿おこしや譜面おこしで聞き難い部分を聞きなおしたりするのに、手はPCのキーボードや、楽器に張り付いていますので、テープ送りを足でコントロールできるとよいのですが、残念ながら、この機能はありません*。1995年発売の「卓上型文書おこしテレコ」と称するBI-85T(定価:65,000円)は再生速度の調整機能とフットコントロールユニットが付いているのですが、DPCが内蔵されていません。「市場規模が小さいのでBI-85TにDPCを内蔵した後継機を作っても売上げがあがらない」ということなのかもしれません。しかし、音楽教育の現場にも使えることもあり、潜在的ニーズは高いのではと思います。
 2002年3月にICレコーダで声のトーンを変えずに早聞き・遅聞き再生できる機能を有したOLYMPUS Voice Trek DS-10が発売されました。2004年12月現在、OLYMPUSのカタログに掲載のICレコーダには全てこの機能が備わっているようです。

*: 本機用として、アクチュエータで操作キーを押す機構を内蔵した箱をつくり、これにレコーダ本体を収納してフットスイッチでコントロールできるものを作ろうかと考えたこともありますが、反転キー、一時停止キーがスライド式で特に後者は動きが硬いため、諦めました。