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ファクシミリの歴史と電話機

 1970年代に業務用として世に登場した頃、ファクシミリは百万円を越える機器だった記憶があります。そして低価格化、小型化が進み、1980年代後半には個人でも手の届く10万円前後のものがでてきました。住処にファクシミリが最初に入ったのは1990年。型番は忘れましたが、B4対応のキャノファックスでした。
 1990年代、家庭を新たな市場としてファクシミリは電話機の付加機能(留守録、ドアホン対応など)を取り込み、G3対応による通信時間の短縮を図りながら、低価格化がすすめられました。また、記録性に乏しい感熱ロール紙から、普通紙への移行も進みました。
 電子メールやその添付ファイルとしての文書のやりとりが圧倒的に多くなり、ファクシミリの使用は少なくなりましたが、電子メールで処理できないこともあり、ファクシミリは通信の道具として欠かせません。
 1980年代、マイクロカセットを使った留守録機能のついた電話機の実売価格は3万円を越えていた記憶がありますが、今日は内蔵メモリーやSDメモリーカードに録音できるようになり、電子製品の低価格化を実感させられます。電話機は固定電話から移動電話へとワイヤの制約から自由になりつつあります。そして固定電話は各プロバイダからIP電話のサービスが提供され、NTTもひかり電話のようにIP電話のサービスを提供、そして通話の相手は限定されますがSkype のように無料IP電話も登場しています(ビジネスモデルとしてSkypeOutの存在がSkypeを成立させているように思われますが)。電話業界は厳しい競争にさらされています。

 

複合機化の進行

 現在のパーソナルファクシミリは上記のように電話機とその付加機能を取り込んだ「電話機+ファクシミリ」の複合機という存在といえます。一方、PCの入出力機器であるプリンタとスキャナを一体化してコピー機としても使えるようにし、さらにFAX MODEMが加えたデジタル複合機の存在があります。この2つの複合機の流れは様々なユーザがあることから今後も並存していくと考えられます。

【パーソナルファクシミリの複合機化の事例】

KX-PD502DW (Panasonic)

  ドアホン呼出でドアホン親機まで走って応対した時代を考えると、ドアホン対応のコードレス子機付電話で応対できるようになったのは格段の進歩でした。そして「さらに不在時のドアホン呼出を出先で受けられたら」と願ったものが、「ドアホンワープ」機能で実現され、KX-PW501DW、KX-PD502DWとPanasonicの製品を使い続ける理由となっています。この機能は電話機の中に昔の電話交換台を内蔵したようなもので、留守電転送機能とともに住居における音声通信機器の正常進化と思います。
 ドアホンを中心として防犯センサー、電気錠への対応などの多機能化を図るというひとつの流れがPanasonicやアイホンなどの製品に見られます。そこでは電話機やPHSなどがシステムの一部としてテレビドアホンの画像を見たりその応対への利用に位置付けられています。一方、ファクシミリが直接、防犯機能に対応するものもあります。FAX-730TA(brother)は赤外線を用いた留守番センサーにより異常などを検知し、音で知らせたり、携帯などの指定電話番号に伝えることができ、SHARPのパーソナルファクシミリUX-F34CWは玄関用ホームセンサー、窓用ホームセンサーと組合せることで、センサーの検知で音を鳴らしたり、登録した電話番号に窓やドアが開いたことを知らせるなど、機器単独で処理を行うことができます。メーカーや同一メーカー内でも事業部の取扱い製品によって様々なアプローチがあるものです。
 「パーソナルファクシミリは成熟商品」として力を入れなくなったメーカーがある一方、上記のように住居の情報センターと位置付けて新しい機能の付加や魅力あるデザインの製品を送り出しているメーカーがあります。パーソナルファクシミリ(あるいは電話機)は、外にいる個人と住処をつなぐ住いの情報センターとして、今後、どのように発展していくのか、興味深いものがあります。

【Lモードについて考えること】

 固定電話とパーソナルファクシミリのLモード対応、インターネット端末との複合機化と考えることができます。しかし、i modeの携帯を既に使っている人、PCを使ってインターネット接続している人がLモードを電話機を買い換えてまで使うかというとそれはないでしょうし、複雑な機能の製品を使うのが嫌なユーザ層には受け入れられないでしょう。通信機器のパーソナル化が進んでいる中、市場の姿が見えてきません。携帯でi modeが売れたことから「固定電話でも」という柳下をねらった企画のように思えてならず、電話機メーカーもLモード対応の製品には力を入れていないようで、NTTがこれから力を入れようとする「ひかり電話」ではサービス対象外になっています。商品企画における市場調査・戦略の誤りのモデルケースになりそうです。

【補足】
 2006年9月17日の日経新聞(朝刊)の1面に「NTT東西 固定電話版iモード撤退」の記事が出ました。2010年をメドにサービス終了見通しとのこと。2006年3月末の契約者数が41万6千人で減少傾向にあり、Lモード対応の製品も店頭には見られませんので「いつ公式発表するか」というレベルだったのでしょう・・。

【PCファックス】

 PCファックスは複合機化というよりも、ファックス機能だけがPCに移植されてしまったというものですが、電子メールが一般的になる前は必需品で、複数の相手に同じファックスを送信するの重宝しました。使用回数自体は減りましたが、現在でもファックス送信のほとんどはデジタル複合機のPCファックス機能を利用しています。なお、ノートPCの内蔵モデムを使用したPCファックス(EasyFax 7 (A. I. soft)を使用)はメールでのやりとりが中心となり、PCも更新したため、使うことはなくなりました。

 

機器の選定

 基本的にはその住いでの電話やファクシミリの使い方により機器を選定するもので、解はひとつに絞れません。私の場合、たまたま、i・ナンバーで2つの電話番号を持ち、この延長でパーソナルファクシミリ、デジタル複合機の2種類の機器を使っています。もし、現在、1つの電話番号だけでPCも使う条件であれば、迷わずドアホン対応のデジタルコードレス子機付の電話をデジタル複合機に外付けする形を選びます。ここで少々、残念に思うのが、VE-PV77L(panasonic)のように子機充電台のデータ通信用モジュラージャックにPCのモデムなどを接続できるワイヤレスデータ通信機能を装備した製品がなくなってしまったこと。その理由はわかりませんが、モジュラーケーブルを床に這わす必要がなく、デジタル複合機の設置場所の自由度を高められることから、また、復活して欲しい機能と思います。

 

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